コラム 経皮毒

よりよく生きるためのウェルネス・コラム 第7 回
経皮毒
薬学博士 竹内久米司 著 「経皮毒が脳をダメにする」より抜粋

「キレやすい」子どもが増加した理由

「キレやすい」子どもが増加した理由

 最近、いわゆる「キレやすい」子どもが増え、「キレる」「ムカつく」などを聞くことが少なくないようです。有害化学物質が脳に影響を与えるという観点から、この「キレやすい」子どもたちの行動と重ね合わせて考えられる実験結果が報告されています。(※ 例・PCB汚染による行動異常・除草剤を与えたら凶暴になったラットなど)また、化学物質の影響は大人たちも受けていることから、近年問題視される幼児虐待や家庭内暴力なども、同じように「キレやすい」大人が増えていることに一因があるのではないかと推測できます。

東京都神経科学総合研究所の黒田博士らは、これまで謎とされてきた、脳の障害の多様な症状のばらつきや、組み合わせが異なる理由をひとつの原因で説明できることを示されています。

つまり、PCBなどの脳に影響を与える毒物が胎児、児の脳の「どの部分にどの時期、どれだけ長く暴露されたか」によって、症状が変わってくるということです。暴露されたその部分が担当している脳機能、脳発達に障害が起き、LD 、ADHD、自閉症などとして、それぞれ異なった多様な症状を併発するという仮説を立てたわけです。この仮説にもとづくと、抑制系のシナブス形成に毒物が 暴露(化学物質が人の体内に取り込まれること) されたとすると抑制機能がはずれて結果的に、「キレやすく」「暴力的」な行動になって現れるであろうということです。

◆血液脳関門(Blood Brain Barrier):脳は人体の中でも重要な器官です。そのため、血液中の物質が勝手に流れこまないようなしくみがあります。このうち、血液から脳内に移行する物質を見張る関所のことを「血液脳関門」と呼びます。血液脳関門は、有毒物質から脳細胞を守る基本的な防衛システムです。アルツハイマー病や精神疾患の患者では、しばしば不完全であることが判明しています。また、この関所の防力には限界があります。そのときの健康状態や化学物質の種類、侵入条件などによっては防ぎきれないことがあるのです。水俣病は、その典型的な例です。

◆ 血液脳関門(Blood Brain Barrier):脳は人体の中でも重要な器官です。そのため、血液中の物質が勝手に流れこまないようなしくみがあります。このうち、血液から脳内に移行する物質を見張る関所のことを「血液脳関門」と呼びます。血液脳関門は、有毒物質から脳細胞を守る基本的な防衛システムです。アルツハイマー病や精神疾患の患者では、しばしば不完全であることが判明しています。また、この関所の防御力には限界があります。そのときの健康状態や化学物質の種類、侵入条件などによっては防ぎきれないことがあるのです。水俣病は、その典型的な例です。

化学物質が体に入ってくる三つの経路

 脳に対してだけでなく、私たちの身の回りには体の各機能を混乱させたり、悪影響を与えたりする有害化学物質が多く存在しています。身の回りに存在する化学物質は大きくわけて、次の三つのルートから体内に侵入していきます。まず一つ目は「経口吸収ルート」、二つ目は「吸入ルート」です。

そして三つ目は、触れたり使用することによって皮膚から侵入してくる「経皮吸収ルート」です。肌が強い弱いには関係なく、有害化学物質が含まれた日用品を使用すれば、誰もが同じようにその化学物質を皮膚から吸収してしまう「経皮毒」のことを知っておく必要があります。

経皮吸収の怖さ

 毒物などが体内に入るとまず最初に肝臓で代謝を受けることが、経口吸収の最大の特徴です。万が一消化管から栄養と一緒に毒物を取りこんでしまった場合は、肝臓にあるたくさんの酵素が、強力な解毒作用によってその毒性を弱めます。化学物質の種類や酵素の働きの違いによって個人差は大きいのですが、最初に肝臓を通過する際に、実にその90%以上もの毒物が解毒されます。これを「初回通過効果」といいます。ところが、皮膚から毒物が入ってくることについては、十分な防御機構が備わっていないのです。皮膚から入った毒物は肝臓を通らず体内に侵入するため、酵素の解毒作用を受けることなく、体に影響を与える可能性があります。これが、経口吸収と大きく異なり、経皮吸収の怖いところなのです。

さらに、私たちが毎日使用する日用品には、合成界面活性剤や薄い細胞膜の脂肪のフィルムを溶かす溶解剤が何種類も添加されています。化学物質が皮膚から吸収されるということの認識が薄いため、いまだに多くの日用品にこうした合成界面活性剤や溶解剤が多用されていることに注意すべきです。経皮吸収された毒性を持つ有害化学物質は、そのまま皮膚に蓄積するか、あるいは徐々に血管やリンパ管などを通して体の各器官に運ばれ悪影響を及ぼすことがあります。解毒と代謝の過程が経口吸収とは違って、特殊な経路のため、化学物質が体外に排出されるためにはたくさんの時間が必要です。化学物質には体内蓄積が一定量に達すると、はじめてその猛威をふるうという性質があります。このため、何十年も経ってから、あるいは何十年も使い続けた結果、突然障害をひき起こすケースが多くみられるのです。

体内に入った化学物質は何をする?

 では、生体内に存在しない外因性化学物質が体に吸収されると、どんなことが起こるのでしょうか。まず、症状が現れやすいものに、中毒症状とアレルギー症状が考えられます。化学物質が毒性を持っていると、その毒性に反応して体のあらゆる箇所で中毒症状が起こります。毒性が強ければ、早い段階で中毒症状をひき起こすことがあります。また、その毒性に対抗すべく、体内でつくられる抗体物質が過敏に反応してしまう状態がアレルギー症状です。これらの症状は物質自体の特性や吸収された量・濃度によって反応が違ってきますし、吸収した人の体質・体調によっても症状の度合いが違ってきます。

経皮吸収のようにゆっくり時間をかけて体内に蓄積された場合、あるとき一定の蓄積量に達して突然反応が現れることもあります。このように、物質の毒性が臓器や器官に直接働いて悪影響を与える化学物質もありますが、少しわかりにくい悪さをする化学物質もあります。たとえば発ガン性物質や環境ホルモンなどです。環境ホルモンは正式には「内分泌撹乱化学物質」と呼ばれ、体内に吸収されるとホルモンに似た働き( 内分泌作用)をする化学物質のことです。

発ガン性物質は体内に吸収されたあと、体内のとどまった部位でガン細胞を発生させる物質で、ガンをひき起こす原因となる化学物質のことです。ガン細胞が発生するメカニズムはとても複雑ですから、数々の調査・研究を重ねてようやくその物質が発ガン性物質だと明らかになります。ガンが死亡原因のトップになっていることからもわかるように、私たちの身の回りには実に多くの発ガン性物質、発ガン性を疑われる化学物質が存在しています。

まだまだ未知の「晩発毒性」がある

 化学物質の毒性には「晩発毒性」というものがあります。たとえば青酸カリなどは体内に入るとすぐ毒性を発揮しますが、発ガン性物質のなかには体内に取りこまれてから30~40 年経って、はじめて病気を発症するという特性を持ったものがあります。このように年月を経過して毒性を発揮することを「晩発毒性」といいます。もし脳の障害が有害化学物質に起因するとすれば汚染がはじまった30~40 年前から障害の発生率は増加していいはずです。しかし、これらの物質が晩発毒性だと考えると、今になって障害の増加がみられるという動向に説明がつきます。その頃生まれた子どもは現在、青年期に入っています。その青年たちの精子数は確かに減少しているのです。それは環境ホルモンによって性ホルモン系が撹乱されたことに起因します。そしてより重大な影響としては、今日になって脳の発達障害や機能異常、育児障害(虐待)などが増加しているという点です。

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